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2024/05/28

Microsoft 365 の各種機能を活用し、職員の職員による職員のための DX で、群馬県を「日本最先端クラスのデジタル県」に

「夏のDigi田甲子園」での 2 部門優勝や、「日本DX大賞」での 2 部門入賞などを果たし、「日本最先端クラスのデジタル県」を目指して歩みを進めてきた群馬県。「職員が主役」、「DIY」、「県民目線」をモットーに、県庁の DX を積極的に推進しています。そのための基盤として導入されているのが Microsoft 365。Microsoft Power Platform などのローコード/ノーコード開発が可能なツールがライセンスに含まれていることが、DIY の大きな推進力になると評価されています。これを活用することで、「土木事務所の相談業務効率化」や「HIV 性感染症検査 Web 予約」など、80 を超えるアプリケーションを職員自身で開発。このような「群馬モデル」は他の自治体からも参考にされており、2023 年 (令和 5 年) 4 月の「G7デジタル・技術大臣会合」が群馬県高崎市で開催されたことも、その成果の 1 つだと評価されています。

Gunma Prefecture

β’ モデルへの移行と同時に「職員による DIY」の推進基盤として Microsoft 365 を導入

日本列島のほぼ中央に位置し、日本百景に選ばれた複数の山岳や、利根川をはじめとする数々の清流といった、美しい自然に恵まれている群馬県。草津や伊香保などの温泉や、富岡製糸場などの歴史遺産も多く、首都圏に短時間で到達できる交通の便も大きな魅力となっています。

そのような群馬の魅力をさらに高めようと、群馬県庁では職員が一丸となり、「日本最先端クラスのデジタル県」を目指して切磋琢磨してきました。2022 年の「夏のDigi田甲子園」では、群馬県代表が 4 部門のうち 2 部門で優勝。2023 年には「日本DX大賞」において、「人と組織部門」大賞、「行政機関・公的機関部門」優秀賞という、2 部門入賞を果たしています。

このような取組をリードしているのが、NTT やインテルなどの民間企業での勤務経験を経て、2020 年 (令和 2 年) 1 月に群馬県 CDO (Chief Digital Transformation Officer) に就任した、デジタルトランスフォーメーション推進監の岡田 亜衣子 氏。その頃の状況を次のように振り返ります。

「まず驚いたのが、検索のために Web ブラウザを立ち上げても、インターネットにつながらないことでした。職員はインターネット接続を行う際に、まず仮想デスクトップにアクセスする必要があり、この作業を毎日のように行っていたのです。これは私から見れば手足を縛られた状態であり、生産性を著しく低下させるものです。このような状況をなんとかしたいという思いから、ネットワークの見直しに着手しました」。

ここで群馬県が選択したのが「β’ (ベータ ダッシュ)」モデルでした。「副知事からも『LGWAN から脱獄せよ』という指示を受けて、2022 年 (令和 4 年) 9 月から β’ モデルでの第 5 次県庁ネットワークの運用をスタートしています」 (岡田 氏)。

このようなネットワーク更新の取組と並行して、2020 年 (令和 2 年) 4 月には全国に先駆けて「デジタルトランスフォーメーション課 (DX課)」を設置。知事をトップとした体制を確立し「群馬県は本気で DX を推進していく」というメッセージを発信したうえで、職員が主体的に DX に取り組める環境作りが進められていきました。

その一環として導入されたのが、Microsoft 365 です。第 5 次県庁ネットワークの運用開始と同時期に導入、「仕事の進め方」「コミュニケーション」「情報共有」「会議」「照会・回答」に関する「5 つの原則」を明確にし、全職員が使えるようにしています。ここで重視したのが、職員が直面している課題を職員自身で解決できる「職員による DIY」を推進することだと、岡田 氏は説明します。

「既にさまざまなローコード/ノーコード開発ツールが登場しており、プログラミングの知識がなくてもアプリケーションを作ることができる時代になっています。このようなツールで職員が自分自身で問題を解決できれば、デジタル経験値を高めることができ、職員の自信にもつながります。そのため、Power Platform などがライセンスに含まれている Microsoft 365 は魅力的なツールの 1 つだと感じていました」。

土木事務所における建築に関する相談対応を Forms や Power Automate などでデジタル化

実際に群馬県では、各部局の DX推進係/事業担当課と DX戦略課の企画係/部局担当者が密に連携した「2+2 (ツー プラス ツー) ミーティング」によって、外部の受託業者に依存しない職員自身の手によるアプリケーションが Microsoft 365 の各種機能を活用することで数多く作成されています。その 1 つが、県土整備部 中之条土木事務所で開発、運用されている「建築関係相談の業務効率化」システムです。

「土木事務所における建築に関する相談を年間 1,000 件程度受けていますが、以前は窓口にいる担当職員がその場で対応していました」と語るのは、群馬県 県土整備部 中之条土木事務所 建築係で主任を務める飯塚 亮太 氏。これまでは、相談のたびに相談者が窓口まで足を運ぶことがほとんどで、複数の相談者が同じタイミングで来所された場合には、一部の相談者に待っていただくか出直していただくことになる、といった問題もあったと言います。「また職員にとっても、書類審査業務などの最中に相談者が来所された場合には、業務を中断して対応しなければなりません。相談対応が終わった後、どこまで業務を進めていたのかわからなくなることも、少なくありませんでした」。

この問題を解決するため、2023 年 (令和 5 年) 4 月に相談対応システムの開発の検討を開始。まずは DX戦略課に「Microsoft 365 を有効活用できないか」という相談を持ちかけたと言います。

これに対して「Microsoft 365 にはさまざまなツールがありますが、最初は相談予約のために Microsoft Bookings を使おうと考えました」と言うのは、このシステムの開発を担当した、群馬県 知事戦略部 DX戦略課 推進係で主任を務める山田 泰彰 氏。しかし実際の相談業務の内容や対応方法を整理していくうちに、相談の大部分は「すぐに回答可能」だということがわかってきたと語ります。

「そこで Bookings ではなく、Microsoft Forms のフォームに相談内容を記入していただき、Microsoft Power Automate で SharePoint リストに整理かつ保存したうえで、Microsoft Teams 経由で担当者に通知、回答や相談日時の調整を Microsoft Outlook でメール送信する、という仕組みを作ることにしました。このように、目的に最適なツールを選択して簡単に組み合わせられるのは、Microsoft 365 の大きなメリットだと感じています」 (山田 氏)。

上記開発方針について中之条土木事務所から同意が得られた後、システムの作成に着手。DX戦略課がプロトタイプを作成し、それに対して中之条土木事務所がフィードバックを行うというサイクルを繰り返しながら、開発が進められていきました。2023 年 (令和 5 年) 8 月には、相談窓口に来所されることが多い事業者に協力していただき、システムの試行運用を実施。そのフィードバックへの対応も盛り込んだうえで、2023 年 10 月に本番稼働を開始しています。

「半年近く使っていますが、相談内容の 9 割以上はメールで回答でき、窓口に来所される方は激減しました」と飯塚 氏。また複数の相談者が同時に窓口に来所されるといったこともなくなり、相談者をお待たせしてしまうという精神的なストレスも解消されたと言います。「メールでの回答であれば、在宅勤務のように担当者が窓口にいなくても対応できます。また相談される方にとっては、フォーム入力が 24 時間 365 日行えるため、事務所が開いているか否かを意識する必要がない、というメリットもあります」。

「今回は相談内容の保存に Microsoft SharePoint を使っていますが、相談内容と回答をデータベース化しており、今後は業務経験の少ない職員でも相談対応できることを期待しています」と語るのは、システム全体の設計を担当した、群馬県 知事戦略部 DX戦略課で始動係長を務める木暮 太郎 氏。また、過去の回答事例を検索するために PowerApps の活用を検討していると言います。

「Microsoft 365 を導入して 1 年半が経過し、業務上の課題解決のため、どのツールを利用すべきか、各ツールの特性を理解している職員も少しずつ増えてきました。最近では、このツールが使えるのではないかといった、Microsoft 365 の具体的なツール名を挙げて、活用方法を相談に来るケースも増えています」(木暮氏)。

性感染症検査も Web 予約可能に、既に 80 本を超えるアプリを職員自身が開発

「土木事務所の相談業務効率化」アプリケーションは、主に DX戦略課が設計、開発を担当しましたが、部局の担当者自身が作り上げたアプリケーションもあります。その一例が「HIV 性感染症検査 Web 予約」アプリケーションです。開発を担当した、群馬県 健康福祉部 感染症・がん疾病対策課 感染症危機管理室 感染症危機管理第一係で主任を務める阿久澤 晃仁 氏は、その背景を次のように説明します。

「保健所では HIV や梅毒といった性感染症の検査を行っていますが、これまでは電話での予約が必要であり、保健所が開いている 8 時半~ 17 時 15 分の間しか予約受付ができませんでした。予約件数は多い年で年間 1,000 件以上に上っており、冷やかしの電話もあり、職員の時間的や精神的な負担が大きかったのです。新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっていた際には検査受付件数を減らしていたのですが、全国的に梅毒の感染者が増加。令和 5 年に 5 類感染症へ移行したタイミングで、HIV では以前から行っていた夜間検査を梅毒でも行おうということになり、これに合わせて検査予約を Web で行えないか、という話が持ち上がりました」。

ここで注目したいのが、その驚くべきスピード感です。2023 年 (令和 5 年) 6 月 7 日にこの話を受け、すぐに DX戦略課に相談。その翌日には開発プロジェクトが動き出し、Bookings と Power Automate、Outlook、Microsoft Teams の組み合わせで実現できるという判断が下されます。そしてさらにその翌日の 6 月 9 日には、阿久澤 氏自身が「動くもの」を作ってしまうのです。

「最初は手探り状態でしたが、実際に使ってみると直感的に操作でき、すぐに動くものができてしまいました。その後は保健所への説明会を 複数回行い、そこで出てきた要望も取り入れ、保健所長会の承認を経て8 月 14 日に正式リリース。今では電話予約が激減し、半数近くの予約が Web で行われており、職員の負担が軽減されました。また、Web 予約の 6 割は夜間の予約であり、利用者の利便性も大いに向上しています。中でも安中保健所では女性の予約が増えており、電話に比べて予約のハードルが下がったと考えられています」 (阿久澤 氏)。

このように Microsoft 365 の採用は、職員自身による DIY に大きな貢献を果たしていることがわかります。この 2 つの事例のほかにも、「職員が Microsoft 365 で開発したアプリケーションは、既に合計で 80 を超えています」と言うのは、群馬県 知事戦略部DX戦略課 企画係で主任を務める柴田 剛志 氏。DX戦略課が発足した時には 2023 年度末までに「日本最先端クラスのデジタル県」になることが目指されましたが、その目標は達成できたと語ります。

またこのような取組は「群馬モデル」として、他の自治体からも参考にされていると柴田 氏。さらに、令和 5 年 4 月の「G7デジタル・技術大臣会合」が群馬県高崎市で開催されたことも、外部評価の 1 つとして考えていると述べています。

「私の体感としても、職員による DIY はかなり進んでいます」と岡田 氏。DX 案件の中には、高度なシステム化が必要なため SIer に外注する必要があるものや、SaaS の導入で対応したものもありますが、半数以上は Microsoft 365 を活用した職員開発で実現されていると言います。「このように群馬県の DX は、正真正銘“職員が主役” です。今後もより多くの職員に、Microsoft 365 のさまざまな機能をもっと使い倒して欲しいと考えています」。

“既にさまざまなローコード/ノーコード開発ツールが登場しており、専門知識やスキルがなくてもデジタル経験値を高めることが可能です。Power Platform がライセンスに含まれている Microsoft 365 は、手軽に操作できるという点から魅力的なツールの 1 つだと感じていました”

岡田 亜衣子 氏, デジタルトランスフォーメーション推進監, 群馬県

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