北杜の新しい未来へ踏み出す「北杜市 DX 推進計画」
北杜の新しい未来へ踏み出すために DX 推進計画を進める山梨県北杜市。同市の特徴的なアプローチは、限られた職員と予算の中で、効果測定に基づいた最適な選択肢を導入することで、投資対効果を高め、予算の最適化を実現していることです。
この取り組みの一環として Microsoft Office 製品 のサポート期限終了に伴い、同市では、Microsoft 365 Apps for Enterprise を採用しました。この選択は単なる更新ではなく、クラウド型サブスクリプションモデルの特性を生かした変化への柔軟な対応、Copilot for Microsoft 365 などの拡張性を高く評価したためです。同市の IT 支援を担う株式会社エーティーエルシステムズの伴走のもと、職員の負荷を軽減し、その分市民サービスの拡充により力を注ぐ庁内の DX 化が進められています。
南アルプス山脈、八ヶ岳、富士山など、美しい山々を背景に一面に広がるひまわり畑。山梨県北西部に位置する北杜市の夏の風物詩です。日本有数の山岳景観を有し、首都圏から車で 2 時間の距離にありアクセスもよく、国内はもとより多くのインバウンド(訪日外国人)観光客が訪れています。また「名水の里」としても有名で、豊かな自然に憧れ、リモートワークで働く人や移住者も増えています。
北杜市は、市民の QOL(生活の質)を向上し、子育て世代や若い世代、次世代産業に選ばれるまちとなるため、2022 年 3 月に「第 3 次北杜市総合計画~幸せ実感 北杜チャレンジプラン~」を作成。計画達成 に向け、同市は総務省の「自治体 DX 推進計画」とも連携し、デジタル活用における方針や取り組み、目標を提示した「北杜市 DX 推進計画」(2023 年~2025 年)を策定しました。同計画は 2022 年に作成を 開始し 2023 年 からスタートしました。
同計画の作成では、商工会、観光協会等の地域関係団体などの代表者や、各課にインタビューを実施し、課題と現状を集約して方向性、施策分野、取り組む施策をまとめました。施策は、約 100 ほどあり、3 年間で半分に絞り込んで取り組んでいきます。北杜市 北杜未来部 未来創造課 デジタル戦略担当 矢崎昌富氏は策定した計画について具体的に説明していきます。
「北杜市 DX 推進計画の基本方針は、『みんなの思いを合わせて、北杜の新しい未来へ踏み出すための DX』です。方向性では、1.市民が暮らし続けたい、誇れるまちづくりのための DX、2.全市民が安心して、快適に過ごせるまちづくりのための DX、3.北杜のありたい姿へチャレンジする庁内の基盤づくり(庁内の DX 化)の 3 つを設定しました」
庁内のDX化で最初に着手したのが、庁内ネットワークの最適化でした。「テーマとしたのは、『LGWAN(総合行政ネットワーク)接続系ネットワークの無線化』、『Microsoft 365 の導入ならびに LGWAN 接続系から利用できる環境』の実現でした。しかし、多くのコストがかかるため、効果検証後に進めたいと、本市の「情報系及びインターネット系」ネットワークの構築・運用・保守を担い、庁内業務に精通する、エーティーエルシステムズに相談しました」と北杜市 企画部 管財課 財産管理担当 小林弘幸氏は振り返ります。
Microsoft 365 Apps for Enterprise を LGWAN 環境で利用
利用してもらい効果を測定。今回の取り組みにおいて、重要なポイントは不必要な投資の未然防止につながったことです」
現状調査によって、課ごとに IT ツールの利用頻度や、課題も異なっていました。Teams については 現状の業務環境だと Web 会議の頻度が低い課も多いため、全庁的な大規模整備ではなく段階的展開が適していることが判明したといいます。
『Microsoft 365 の導入ならびに LGWAN 接続系から利用できる環境』の実証では、Web 会議が増える中、Microsoft Teams のLGWAN環境での効果検証をおこないました。現時点では Teams を含めたMicrosoft365ライセンスを全職員へ導入するには尚早との判断に至りました。「Teams の導入効果を最大限に得るためには、職員の IT リテラシー向上や、業務の見直しが必要です。今後、これらの課題を解決し、適切なタイミングでの導入を視野に検討します」と小林氏は説明します。
総務省が提唱した『自治体情報システム強靭性向上モデル』(αモデル)の構成をベースとし、ローカルブレイクアウトを採用するα’モデルの方法が、本市でも有効だと考えています。Microsoft 365 Apps for Enterprise とローカルブレイクアウトにより自宅でも業務がおこなえるため、働き方の多様化と生産性向上の両立が図れます
矢崎 昌富 氏, 北杜未来部 未来創造課, 北杜市
同市では、これまで Microsoft Office 2016、Microsoft Office 2019 を利用しており、2025 年にサポート期限が終了します。次の製品に何を選択するべきか。「Office 2021 は、2026 年にサポート期限が終了するため、2 年しか使えないため、Teams を含まない Microsoft 365 Apps for Enterprise の導入を提案しました」と株式会社エーティーエルシステムズ ビジネスデザイン部 行政ユニット リーダー 権正大地氏は話します。
従来、同市が利用していた Office 製品は、オンプレミスの買い切り型でした。Microsoft 365 Apps for Enterprise は、クラウド型サブスクリプションモデルです。LGWAN 接続環境から Microsoft 365 Apps for Enterprise を利用するためには、インターネット接続が必要です。Microsoft 365 を、LGWAN 接続環境から安全安心に利用することは、庁内ネットワーク最適化整備計画で、すでに実証していました。鍵となるのがローカルブレイクアウトです。
「LGWAN 接続系とインターネット接続系の間にある中間ファイアウォールにインターネットへの出口を設け、特定のクラウドサービスだけを使用できる環境を実現しました。インターネットとの接点となるため、総務省の方針※を踏まえたセキュアなローカルブレイクアウトとなっています。また当社は、北杜市のセキュリティ運営もサポートしており、クラウド利用や在宅勤務などに向けたセキュリティポリシーの改訂も支援しています」(寉田氏)
※実証時(2023年12月時点)のセキュリティポリシーガイドライン
矢崎氏も、「総務省が提唱した『自治体情報システム強靭性向上モデル』(αモデル)の構成をベースとし、ローカルブレイクアウトを採用するα’モデルの方法が、本市でも有効だと考えています。Microsoft 365 Apps for Enterprise とローカルブレイクアウトにより自宅でも業務がおこなえるため、働き方の多様化と生産性向上の両立が図れます」と付け加えます。
サブスクリクションタイプでは、クラウドを通じて自動的にアップデートされ、常に最新のものを利用できるため、セキュリティ強化にもつながります。またコスト面でも効果があります
小林 弘幸 氏, 企画部 管財課 財産管理担当, 北杜市
Copilot for Microsoft 365 の利用など拡張性に大きな期待
2024 年度から庁内 LGWAN の無線化に着手。実証でも無線化は非常に人気があったと小林氏は話します。「無線環境下であれば自分の好きな場所で仕事ができます。会議なども紙の資料を持参することなく、自席から端末を持っていくだけです」
Microsoft 365 Apps for Enterprise の導入にあたっては、一度に多くのコストがかからないように、年度ごとに端末の入替とセットで導入し、数年かけて完了する計画となっています。北杜市がオンプレミスの Office 製品からクラウド型サブスクリプションモデルの Microsoft 365 Apps for Enterprise に移行したのは、サポート期限終了だけでなく未来を見据えた選択でもありました。
「買い切り型ではアップデート作業を伴います。サブスクリクションタイプでは、クラウドを通じて自動的にアップデートされ、常に最新のものを利用できるため、セキュリティ強化にもつながります。またコスト面でも効果があります。サブスクリプションはユーザー単位でのライセンスとなるので、同じ Microsoft アカウントであればアプリを最大 5 台の PC、5 台のタブレット、5 台のモバイル デバイスにインストールできるため活用の幅がひろがります」(小林氏)
運用面では、従来と変わらないことがメリットとなります。「北杜市の AD(Active Directory)サーバーと Microsoft Entra ID(旧称 Azure Active Directory)を連携し、ユーザーは従来の ID で利用できる環境としました。また、クラウドなのでバージョンアップも自動的におこなわれ、サポート終了期限も気にする必要もなく運用も楽になります」(権正氏)
矢崎氏は、「期待が大きいのは、Microsoft 365 Apps for Enterprise で Copilot for Microsoft 365 をはじめとした最新のサービスを利用できることです。ライセンスは必要となりますが、利用したい時にすぐに始めることができるのは大きなメリットになると思います。北杜市ではすでに生成 AI のガイドラインを作成しています」と話します。
LGWAN 接続系とインターネット接続系の間にある中間ファイアウォールにインターネットへの出口を設け、特定のクラウドサービスだけを使用できる環境を実現しました。インターネットとの接点となるため、総務省の方針を踏まえたセキュアなローカルブレイクアウトとなっています
寉田 悟 氏, 執行役員 ビジネスデザイン部 部長, 株式会社エーティーエルシステムズ
生成 AI は、会議の議事録作成、文章の翻訳、原稿・資料作成など得意領域があります。これらをよくおこなう原課に対し、効果測定を実施するのも有効なアプローチになると権正氏は話し、こう続けます。「市の業務が増える中で、職員の負荷を高めることなく住民サービスのさらなる向上を図るためには、生成 AI の活用が有効です。たとえば、生成 AI を利用して定型的な書類作成やデータ入力を自動化することで、職員はより複雑な問題解決や住民対応に集中することができます。生成 AI により創出した時間を活用することで、迅速かつ質の高いサービス提供が可能となり、住民満足度の向上にもつながるのではないでしょうか」
DX 推進課計画を実行に移すためには知恵やノウハウが必要です。常に伴走をつづけるパートナーについて小林氏は次のように語ります。「エーティーエルシステムズに話をしない日はないほど頼らせてもらっています。相談すると、親身になって一緒に考えて、当市の視点に立った解決策を提案してくれます。DX 推進課計画の実現に向け、これからも協力をお願いしたいですね」
今後の展望について矢崎氏は話します。「市民の QOL(生活の質)向上、地域振興に向けて、DX 推進計画を着実に進めていきます。また、庁内ネットワークの最適化では、電話機端末のスマートフォン化を目的にクラウド PBX(電話交換機)の導入も検討中です。Microsoft 365 Apps for Enterprise の導入により、庁舎移転、職員の働き方の多様化などの変化に対し柔軟に応え、新しい機能を利用できる拡張性のある土台を構築できました」
北杜市は、エーティーエルシステムズの伴走のもと、2024 年 10 月に改訂されたセキュリティポリシーに関するガイドラインで示されたセキュリティ対策も検討していくとともに、クラウドサービスを安心して利用できる環境の構築を目指し、「北杜市DX推進計画」の実現に歩みを進めています。Microsoft 365 Apps for Enterprise の導入は、北杜の新しい未来へつながる大きな一歩となりました。
北杜市の AD(Active Directory)サーバーと Microsoft Entra ID を連携し、ユーザーは従来の ID で利用できる環境としました。また、クラウドなのでバージョンアップも自動的に行われ、サポート終了期限も気にする必要もなく運用も楽になります
権正 大地 氏, ビジネスデザイン部行政ユニット リーダー, 株式会社エーティーエルシステムズ
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